【海外ノマドの税金】確定申告での経費や所得税はどうする?徹底解説【2025年版】

海外ノマドとして働いていると、「税金ってどこに払えばいいの?」「確定申告って必要?」「住民票は抜くべき?」など疑問が尽きません。

この記事では、日本に住所を持たずに海外で生活・仕事をするノマドワーカーが、合法的に、かつ損をしないための税務知識をまるごと解説します。

目次

海外ノマドでも確定申告は必要?

「海外に住んでいれば、日本の税金はもう関係ない」と考える人は少なくありません。

しかし、海外ノマドでも「日本の税務ルール」に該当すれば、確定申告が必要になります。特に日本に顧客や収入源がある場合、申告しないと追徴課税のリスクもあるため、早めに正しい知識を身につけておきましょう。


海外在住でも申告が必要なケースとは?

次のいずれかに当てはまる人は、海外に住んでいても日本で確定申告が必要です。

  • 日本国内の企業や個人から報酬を受け取っている(ライター、IT業など)

  • 日本の銀行口座に副業収入が入っている

  • 日本の株式や不動産を所有し、配当や賃料収入がある

  • 年間所得が基礎控除(48万円)を超えている(非課税にならない)

つまり、収入の“発生地”が日本であれば、物理的な居住地に関係なく納税義務が生じる可能性があるのです。

たとえ年のほとんどを海外で暮らしていても、日本からの報酬を得ているなら、原則「確定申告は必要」と考えるべきです。

非居住者と居住者の違いとは?

確定申告の必要性を判断する上で、重要なのが「居住者」と「非居住者」の違いです。

■ 居住者とは?

  • 日本に「住所」または「1年以上の居所」がある人

  • または、過去に日本に1年以上滞在した実績があり、引き続き日本との生活基盤があると見なされる人

■ 非居住者とは?

  • 日本に住所も居所もなく、海外に生活拠点を移して1年以上経過している人

  • 海外転出届を出しているケースが該当することが多い

区分

納税義務

居住者

全世界所得に課税(日本国外の収入も対象)

非居住者

日本国内源泉所得のみ課税対象

確定申告の提出先と手続き方法

■ 提出先

  • 所得税の確定申告書は、「最後に住民票があった住所を管轄する税務署」に提出します。

■ 提出方法

  • 海外にいても申告書を日本に郵送することが可能です。

  • また、マイナンバーカード+e-Tax環境が整っていれば、海外から電子申告(e-Tax)も可能です。

■ 提出期限

  • 原則として、毎年3月15日までに提出(年によって若干の変動あり)


経費として落とせる支出とは?

海外ノマドとして働くうえで、「どこまでが経費になるのか」は非常に重要なポイントです。

正しく経費を計上すれば、課税所得が減り、支払う税金も軽くなります。とはいえ、海外での生活と仕事が混在するノマドスタイルでは、グレーな支出も多く、判断に迷うこともしばしばです。

ここでは、海外ノマドが実際に落とせる経費の種類と、注意点を具体的に解説します。

費用項目

内容例

通信費

モバイルSIM、Wi-Fiルーター、現地のネット代など

サブスク代

Canva、Notion、Adobe、クラウドストレージなど

ソフトウェア

編集ソフト、翻訳アプリ、開発ツール等

旅費交通費

航空券、鉄道、現地交通(Grabなど)

宿泊費

作業目的のホテル・コワーキング併設の施設など

業務委託費

翻訳・ライティング・動画編集などの外注費

消耗品

ガジェット類、ノートPC、充電器、撮影機材など

書籍・教材費

ビジネス関連書籍、オンライン講座

家賃・通信費・航空券は経費になる?

■ 家賃

「仕事専用スペースがある」ことが明確なら一部は経費にできる

例:ワンルームの半分を作業部屋として使っている場合、50%を経費に

Airbnbやホテル滞在の場合も、仕事目的(撮影、執筆など)があるなら按分して計上可能。ただし「観光」の要素が強い場合は税務署で否認されやすい。

■ 通信費

→ 高い確率で全額経費にできる

特にクラウドワーク、SNS運用などネット依存型業務なら問題なし。

■ 航空券

→ 「業務に必要な移動」と説明できれば経費にできる

たとえば以下のような場合:

  • 海外クライアントとの打ち合わせで渡航

  • 現地の取材や調査活動

  • 海外ノマド特集のブログ・動画撮影

観光や一時帰国目的はNG。旅行と業務を兼ねる場合は、業務日数や目的の割合で按分します。

領収書が取れない場合の対応策

海外ではレシートが英語や現地語だったり、そもそも発行してくれない店や露店も多くあります。そんなときのために、次のような対応をしておくと安心です。

■ 方法1:出金伝票を作る(日本式)

  • 日付、金額、支払先、内容、用途を記録

  • 手書き or Excel等で保存

  • 自署または電子署名を加える

■ 方法2:メモ+写真で記録を残す

  • 現地通貨レシートでもOK(スマホで撮影)

  • 内容が不明ならメモを添付

  • クレカ明細と照合できるとより確実

■ 方法3:会計ソフトに逐次記録

  • freee や MoneyForward で都度メモ登録

  • 外貨換算のレートを記録しておく

 税務署に「業務の実態」と「支出の根拠」を説明できるようにしておくことがポイントです。

開業届は出すべき?海外在住でも必要?

フリーランスとして海外で仕事を始める際、「開業届って出すべき?」「そもそも海外から提出できるの?」と疑問に思う人は多いはずです。結論から言うと、海外ノマドであっても開業届は出すべきです。理由は、節税メリットと信用力の向上にあります。

以下では、開業届を出す意義と、実際に海外から提出する方法までを詳しく解説します。


開業届の役割と出すメリット

■ 開業届とは?

開業届(「個人事業の開業・廃業等届出書」)は、個人が事業を開始したことを税務署に報告する届出書類です。提出することで、「事業者」として正式に税務署に認識されます。

メリット

内容

✅ 青色申告ができる

最大65万円の控除が受けられる(要申請)

✅ 経費計上がしやすくなる

事業所得として明確に区分できる

✅ 銀行・クレカの審査が通りやすい

「屋号あり」で事業口座の開設に役立つ

✅ 海外居住でも“日本のフリーランス”としての信用力が上がる

租税条約や納税証明が必要な場面で便利

日本在住でなくても開業できる?

答えは「できる」です。

海外在住でも、次の条件のいずれかに当てはまれば開業届の提出が可能です。

  • 日本に納税義務がある(国内源泉所得がある)

  • 最後の住所地に住民票が残っていた、または納税管理人を立てている

■ ポイント:

  • 日本の「住所地」がない場合は、「納税地」欄に「納税管理人の住所」を記載します

  • 海外からでも、日本の税制に従ってビジネスを行う意思を示すことができます

「海外にいても、日本の仕事で稼いでいる=事業活動を行っている」とみなされるので、納税の意思と履歴を明確にするためにも開業届は出しておくのが得策です。


e-Taxや郵送で出す方法(実体験ベースも可)

■ 方法1:郵送提出(もっとも一般的)

  • 国税庁のウェブサイトからPDFを印刷

     👉 個人事業の開業届出書(PDF)

  • 記入して、最後に住民票があった税務署へ郵送

  • 郵送時には「控え」も同封し、返信用封筒+切手を同封して返送してもらう


■ 方法2:e-Taxで電子提出(条件付き)

  • マイナンバーカード+ICカードリーダー+日本の住所が必要

  • 海外からe-Taxを使う場合は、日本で事前に環境構築しておく必要あり

  • 開業届だけでなく「青色申告承認申請書」も同時に出せる

日本に住民票がないとどうなる?

海外ノマドを始めるとき、多くの人が悩むのが「住民票は抜くべきか?」という問題です。

住民票を抜く(=海外転出届を出す)ことで、税金や社会保険の義務が変わります。ただし、メリットばかりではなく、手続きや再帰国時の影響など注意点も多いため、慎重に判断する必要があります。

メリット

メリット

内容

✅ 国民健康保険の支払い義務がなくなる

月1〜2万円程度の固定費を削減できる

✅ 国民年金の支払いも任意に

強制加入から外れる(後述)

✅ 住民税が課税されなくなる

所得が日本にあっても、住民票がなければ住民税は非課税に

デメリット

デメリット

内容

⚠ 日本の行政サービスが一部利用不可に

マイナンバーカードの更新、住民票写しの取得など

⚠ 免許証の住所登録が空欄になる

各種証明に支障が出ることも

⚠ 再帰国時に再登録が必要

再度住民票を入れ直し、健康保険なども再加入が必要

国民健康保険・年金との関係

■ 国民健康保険(国保)

  • 日本の自治体に住所がある限り、収入がゼロでも国保料の支払い義務があります

  • 住民票を抜くことで国保の資格は自動的に喪失し、保険料の支払いも停止されます

→ 医療費を現地または海外旅行保険・クレジットカード付帯保険でカバーするのが一般的です

■ 国民年金

  • 住民票を抜くことで国民年金の「強制加入義務」もなくなります

  • ただし、「任意加入制度」により希望すれば払い続けることも可能

「海外転出届」の注意点とタイミング

■ 海外転出届とは?

  • 海外に1年以上滞在予定の場合に提出するべき届出

  • 出国日の14日前から、住民票のある市区町村役場で手続き可能

項目

内容

提出期限

出国の2週間前から可能(遅れても可だが、住民税が発生する場合あり)

必要書類

本人確認書類、マイナンバーカード、印鑑など(自治体により異なる)

家族単位

同時に家族の転出も申請できる(ただし世帯分離に注意)

税理士に依頼するメリットと相場

海外ノマドとして日本の税制に対応する際、税理士に依頼すべきかどうかは悩みどころです。結論から言えば、「所得が一定以上ある」「二重課税や経費処理が複雑」「非居住者扱いになる」という人ほど、税理士のサポートが効果的です。

ここでは、海外ノマドに強い税理士の探し方、費用相場、実際のサポート内容について解説します。


海外ノマドに強い税理士の探し方

すべての税理士が海外ノマドに詳しいわけではありません。選ぶべきは、以下のような「国際税務」や「フリーランスの海外活動」に対応している専門家です。

選ぶ際の確認項目

  • 非居住者の確定申告に対応しているか?

  • 海外からのリモート対応(Zoom、メールなど)が可能か?

  • 海外在住フリーランスの実績があるか?

方法

詳細

税理士ドットコムやfreee税理士検索

「非居住者」「海外所得」などのキーワードで検索

TwitterやnoteなどSNS経由

海外在住者の紹介や口コミを参考にする

クラウド会計ソフトの提携税理士

MoneyForwardやfreeeで紹介される専門税理士

税理士費用の相場感(確定申告/顧問契約)

税理士費用は、スポット契約か月額顧問契約かで大きく異なります。

■ 確定申告のみのスポット契約(年1回)

内容

費用相場

白色申告

2〜3万円程度

青色申告(10万円控除)

3〜5万円程度

青色申告(65万円控除・帳簿作成含む)

5〜10万円程度

非居住者・海外所得含むケース

8〜15万円程度が目安

顧問契約(月額固定)

内容

費用相場

一般的な個人事業主

月1〜2万円程度

海外ノマド+資産運用+法人相談あり

月3万円以上もあり

節税・二重課税防止のアドバイス事例

税理士が入ることで、自己判断では見落としがちなリスクや節税チャンスを逃さずに済みます。具体的には以下のような事例があります。

✅ 事例1:二重課税を防ぐ

  • タイやベトナムなど、所得税のある国で課税されていても、日本側で租税条約に基づいて控除・免除を受けられる

  • 手続きには適用条項の理解と書類対応が必要だが、税理士がサポート可能

✅ 事例2:経費処理の最適化

  • 「一部仕事・一部観光」の出費でも、按分して正確に計上すれば経費にできる

  • 領収書の不備や現地通貨の換算も適切に処理可能

✅ 事例3:青色申告による控除と赤字繰越

  • 開業届+青色申告で最大65万円控除

  • 赤字の場合でも3年間の繰越が可能になり、将来の節税が可能

よくあるQ&A(FAQ)

海外ノマドとして活動していると、日本と海外の税制のはざまで疑問や不安を感じることも多いでしょう。このセクションでは、特に問い合わせの多い「二重課税」「現地申告の必要性」「外貨収入の扱い」に関して、実務に基づいた答えを提示します。


海外ノマドは二重課税されるの?

■ 結論:原則として「防げる」が、正しく申告しないと重複する可能性あり

たとえば、日本とタイの両国で所得税を課された場合、本来は日・タイ間の「租税条約」により二重課税を回避できる仕組みがあります。

✅ 二重課税を防ぐ方法(例):

  • 外国で支払った所得税を、日本の確定申告で「外国税額控除」として申請

  • 条件や限度額があるため、税理士のサポートが推奨される

  • 条約未締結国(例:タックスヘイブン)は対応不可のケースも

🔍 日本が租税条約を結んでいる国一覧は国税庁公式サイトで確認可能です。


H3. 現地の税務署にも申告する必要がある?

■ 基本ルール:

  • 居住者として滞在している国では、現地の税法に従って申告・納税の義務が生じる可能性あり

  • 滞在期間が短い場合(例:ビザなしで2〜3か月)には申告不要なことが多いが、就労とみなされると課税対象になる国も存在

滞在スタイル

申告の必要性

ノービザ滞在(観光目的)

基本的に不要

ノマドビザ/長期滞在許可

多くの国でビザを発行しているため、要確認

現地法人・事業所を設立

必ず現地申告が必要

海外送金や外貨収入はどう扱う?

■ 外貨建て収入(例:USD, EUR, THBなど)

  • 日本の確定申告では「円換算」で記載する必要あり

  • 基本は「受取日のTTM(公示仲値)」で換算

  • 月まとめなどで平均レート換算する人もいるが、正確を期すなら1取引ごとにレート記録がベター

■ 海外送金に関する注意点

内容

リスク・注意点

100万円以上の送金

銀行・税務署に報告義務あり(マネロン対策)

日本の口座へ送金

「国内源泉所得」と見なされるリスクも

現地口座での収入管理

非居住者なら日本では課税対象外の可能性も(収入源による)

まとめ:海外ノマドでも「税」は避けて通れない

海外で自由に働くノマドスタイルは、確かに魅力的で柔軟性に富んだライフスタイルです。しかしその一方で、税金・確定申告・開業届・住民票の扱いなど、法律と制度の壁が立ちはだかります。

この記事で解説したように、以下のポイントを押さえておくことで、トラブルを防ぎ、税務リスクを最小限に抑えられます。


✅ 海外ノマドの税務・制度チェックリスト:

  • 🔲 日本に収入源があるなら、非居住者でも確定申告が必要

  • 🔲 経費計上は「仕事との関連性」と「按分」で判断

  • 🔲 開業届を出せば、青色申告や控除などのメリットが得られる

  • 🔲 住民票を抜くことで住民税・国保の支払いを回避可能(ただしデメリットも)

  • 🔲 税理士の力を借りれば、二重課税や海外所得の扱いも安心

  • 🔲 外貨収入や海外送金は、円換算と記録保存が必須

  • 🔲 滞在国によっては、現地での税務申告も必要


海外ノマドにとって、税金は「面倒なもの」ではなく、自由な働き方を守るための“防具”のような存在です。リスクを理解し、制度をうまく使いこなすことで、あなたのノマド生活はさらに持続可能で安定したものになります。